×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
複雑な家系……そうなんだろうな――紘は認めざるを得ない。大体未だ少年である柘羅がこんな邸を構え、それでいて伯父に縛られていると言うのだから複雑怪奇もいい所だ。
「なぁ、あいつって親はどうしてるんだ?」家系の事に思い及んだ紘は、ふといつも疑問に思っていた事を質した。
「亡くなられた。あいつが十歳かそこらの時に、二人纏めて……」
事故か、という紘の問いに、彼は曖昧に頷いた。
「少なくとも俺はそう聞いている」と付け加えはしたが。「しかし俺もその頃は未だ十二歳位だったからな。それにそんな話は大人連中はなかなか俺達の居る前じゃしようとしなかったし……」
丸で事故という公式発表が嘘だと言ってでもいる様だ――しかし紘は特に追求する事はしなかった。この分では話してくれるかどうかも疑問だったし。
「で、伯父さんが後見人って訳か?」
「そんな所だ。尤も金以外の面倒は彼が雇った者達がずっと見ていたからな。柘羅も親だとは思っていないらしい」
「……言わせて貰っていいか? 贅沢者って」
「贅沢……?」瓏琳は紘の言い出した事が解らない様子で眉を顰めた。
「同じ孤児でもこちとら金だけでも出してくれる親戚なんざ一人も居ないんだぜ? そんな奴から見りゃ、充分贅沢だよ!」
「でも、あいつは金なんて欲しくは……」
「金に不自由した事無いんだろ? その伯父さんのお陰で。あれだけぼうっとしていながら、あの歳迄生きてこられたのだって金があって保護者が居たからだぜ? もしあいつがあの街に生まれてて、そんな伯父さんも居なかったとしたら……あいつ、あの歳迄生きてられなかったろうぜ」
「……」瓏琳は流石に、拳を握り締めながら紘を睨み据えた。「柘羅は俺の親友なんだがな……?」それでも言うか、と言外に仄めかす。
「だったら無茶な真似して寿命を縮めさせる様な馬鹿げた事はするなよな」
「今更旅に出るのが嫌だとでも言い出す気か?」
「いいや。言っても聞かないだろ? あいつは」紘は頭を振った。「けど旅に出たら今迄の様に贅沢は言ってられない。その覚悟だけはさせときたいって事さ。あんたにもな」
「それはご親切に……!」瓏琳は言いながら既に部屋の出口に向かっていた。足音が荒く響く。
あーあ、マジになってやんの――紘は肩を竦めた。案外短気な奴だ。それとも柘羅に関した事だけだろうか?
「親友大事もいいけれど……」去って行こうとする後ろ姿に、ぼそっと紘は呟いた。「親友は親友であって、保護者じゃないよな?」
「……」瓏琳は黙した儘ながら、僅かに脚を止めた。しかし勢いを止めるには血気に逸っていたのか、その脚は直ぐに外へと彼を連れて行った。
その夕方、紘の部屋に柘羅が姿を現した。瓏琳は何も言わなかったらしいのだが、それでも彼が珍しく苛立っている事に勘付いた様だ。
「瓏琳は別に怒ってやしないよ」彼は紘を安心させる心算か、直ぐ様そう切り出した。
「俺も別に怒っちゃいない」紘は態と不機嫌を装って言った。どうも、ここ暫くこの部屋に籠もりっ切りで鬱憤が溜まっている様だ。
「……」
「……」
柘羅は言葉に詰まった。元々二人の間に何があったのかは知らないのだから、仲裁も何もあったものではない。が、紘は助け舟を出してやろうとしなかった。
「……」
「……」
柘羅は言葉を探して視線を彷徨わせたが、言葉が空中に転がっている筈もない。
「……」
「あーもうっ! 怒ってないって言ってんだろうが!」紘は根負けした。
「それは良かった」柘羅は途端に笑顔になる。それが丸で彼が根負けするのを待って用意されていた様で、紘はやや癪に障った。しかしこんな奴相手に怒っても血圧が上がるだけで何の得も無いぞ、と自分に言い聞かせ、何とか抑える。
「で? その怒ってない奴の所に何御機嫌窺いに来てんだ? 的外れもいい所だろうに」それでも憎まれ口は言う。
「君も案外意地悪だな」柘羅は苦笑しながら言った。「殊に自分に対して……」
「俺に対して……?」紘は意味が解らず小首を傾げる。自分に対して意地悪とはどういう事だろうか。
「解らないならいいよ。その内解るだろうから」
「……お前も案外意地が悪いぞ?」
「そうかな?」柘羅はくすくすと笑う。「でももしそうなら丁度いいだろう? 君一人で悪役やるより皆で言い合いしていた方がきっと旅の間も楽しいよ」
―つづく―
「なぁ、あいつって親はどうしてるんだ?」家系の事に思い及んだ紘は、ふといつも疑問に思っていた事を質した。
「亡くなられた。あいつが十歳かそこらの時に、二人纏めて……」
事故か、という紘の問いに、彼は曖昧に頷いた。
「少なくとも俺はそう聞いている」と付け加えはしたが。「しかし俺もその頃は未だ十二歳位だったからな。それにそんな話は大人連中はなかなか俺達の居る前じゃしようとしなかったし……」
丸で事故という公式発表が嘘だと言ってでもいる様だ――しかし紘は特に追求する事はしなかった。この分では話してくれるかどうかも疑問だったし。
「で、伯父さんが後見人って訳か?」
「そんな所だ。尤も金以外の面倒は彼が雇った者達がずっと見ていたからな。柘羅も親だとは思っていないらしい」
「……言わせて貰っていいか? 贅沢者って」
「贅沢……?」瓏琳は紘の言い出した事が解らない様子で眉を顰めた。
「同じ孤児でもこちとら金だけでも出してくれる親戚なんざ一人も居ないんだぜ? そんな奴から見りゃ、充分贅沢だよ!」
「でも、あいつは金なんて欲しくは……」
「金に不自由した事無いんだろ? その伯父さんのお陰で。あれだけぼうっとしていながら、あの歳迄生きてこられたのだって金があって保護者が居たからだぜ? もしあいつがあの街に生まれてて、そんな伯父さんも居なかったとしたら……あいつ、あの歳迄生きてられなかったろうぜ」
「……」瓏琳は流石に、拳を握り締めながら紘を睨み据えた。「柘羅は俺の親友なんだがな……?」それでも言うか、と言外に仄めかす。
「だったら無茶な真似して寿命を縮めさせる様な馬鹿げた事はするなよな」
「今更旅に出るのが嫌だとでも言い出す気か?」
「いいや。言っても聞かないだろ? あいつは」紘は頭を振った。「けど旅に出たら今迄の様に贅沢は言ってられない。その覚悟だけはさせときたいって事さ。あんたにもな」
「それはご親切に……!」瓏琳は言いながら既に部屋の出口に向かっていた。足音が荒く響く。
あーあ、マジになってやんの――紘は肩を竦めた。案外短気な奴だ。それとも柘羅に関した事だけだろうか?
「親友大事もいいけれど……」去って行こうとする後ろ姿に、ぼそっと紘は呟いた。「親友は親友であって、保護者じゃないよな?」
「……」瓏琳は黙した儘ながら、僅かに脚を止めた。しかし勢いを止めるには血気に逸っていたのか、その脚は直ぐに外へと彼を連れて行った。
その夕方、紘の部屋に柘羅が姿を現した。瓏琳は何も言わなかったらしいのだが、それでも彼が珍しく苛立っている事に勘付いた様だ。
「瓏琳は別に怒ってやしないよ」彼は紘を安心させる心算か、直ぐ様そう切り出した。
「俺も別に怒っちゃいない」紘は態と不機嫌を装って言った。どうも、ここ暫くこの部屋に籠もりっ切りで鬱憤が溜まっている様だ。
「……」
「……」
柘羅は言葉に詰まった。元々二人の間に何があったのかは知らないのだから、仲裁も何もあったものではない。が、紘は助け舟を出してやろうとしなかった。
「……」
「……」
柘羅は言葉を探して視線を彷徨わせたが、言葉が空中に転がっている筈もない。
「……」
「あーもうっ! 怒ってないって言ってんだろうが!」紘は根負けした。
「それは良かった」柘羅は途端に笑顔になる。それが丸で彼が根負けするのを待って用意されていた様で、紘はやや癪に障った。しかしこんな奴相手に怒っても血圧が上がるだけで何の得も無いぞ、と自分に言い聞かせ、何とか抑える。
「で? その怒ってない奴の所に何御機嫌窺いに来てんだ? 的外れもいい所だろうに」それでも憎まれ口は言う。
「君も案外意地悪だな」柘羅は苦笑しながら言った。「殊に自分に対して……」
「俺に対して……?」紘は意味が解らず小首を傾げる。自分に対して意地悪とはどういう事だろうか。
「解らないならいいよ。その内解るだろうから」
「……お前も案外意地が悪いぞ?」
「そうかな?」柘羅はくすくすと笑う。「でももしそうなら丁度いいだろう? 君一人で悪役やるより皆で言い合いしていた方がきっと旅の間も楽しいよ」
―つづく―
PR
この記事にコメントする
Re:なんだなんだ?
シィ様って……(笑)
琳璃に絞められますよー?
琳璃に絞められますよー?
殺生やなぁ・・・・・
ま!何でも大抵は良いところで無情な「つづく」と言う文字が出てくるってのが相場だけど!
これは結構ストレスやでぇ!
はよ先が知りたいって気持がねぇ~!
瓏琳さんも紘さんも良い男だねぇ!
きっとプリンス柘羅を真ん中に強い絆で結ばれていくんだろうなぁ・・・良いネェ!男の友情!
これは結構ストレスやでぇ!
はよ先が知りたいって気持がねぇ~!
瓏琳さんも紘さんも良い男だねぇ!
きっとプリンス柘羅を真ん中に強い絆で結ばれていくんだろうなぁ・・・良いネェ!男の友情!
Re:殺生やなぁ・・・・・
プ、プリンスですか(笑)
書く方はある意味楽なんですけどね、つづく(苦笑)
短編だと兎に角オチと言うか、片を付けてしまわないといけない。先延ばし出来ないもんねぇ。
書く方はある意味楽なんですけどね、つづく(苦笑)
短編だと兎に角オチと言うか、片を付けてしまわないといけない。先延ばし出来ないもんねぇ。
Re:きのう月夜が、意
何を?